忍――
それは遙か昔、戦国の世にあった影(かげ)の存在。
人の中に隠れ、探り、煽り、騙し、壊し。そして――殺す。
あらゆる闇の仕事を引き受けていた陰(かげ)の存在――
いつしか人々の心から消え去り、おとぎ話のように語られるだけになってしまった翳(かげ)の存在。
しかし彼らが人々の心から消え去ろうとも、幾年月日が過ぎようとも、人々の業は変わることがない
いまだ闇の世界に生きるものは必要され続けている。
そう。忍は今も存在しているのだ。
現代の忍の雇い主は、政治家や大企業の幹部たち。
強大な権力を持った彼らの中には忍を己の欲を満たすための道具と考えているものもいる。
そんな闇に動かされた悪忍たちに対抗するために政府はあるプロジェクトを立ち上げた。
善忍――そう呼ばれる国家所属の忍びを育成する機密プロジェクトだ。
そして育成するために作られた機関の名前は
「国立半蔵学院」
この物語は、奇しくもその学院で、青春を捧げることになった女学生たちの戦いの軌跡である。
半蔵学院に入学したばかりの元気少女、飛鳥。彼女が戦いの先に何を見るのか。
何を得て何を失うのか。それはまだ誰にもわからない。
光あるところに影がある。これすなわち、陰と陽の理なり。
そして……影の中にもまた陰と陽が存在する。
その陰の存在であるのが、
……悪忍
世を影から支える忍の中でも、陰に属する者たちのことだ。
悪忍は大企業や政治家などから仕事を請け、
暗殺や破壊活動などの違法行為も厭わず任務を遂行する。
同じ忍でも国家に所属する善忍とは対極の存在である。
悪忍は負の存在だ、と言う者がいる。
しかし……善忍と悪人。立場の他に違いはあるのだろうか。
善忍ができないことを悪忍が行い、悪忍ができないことを善忍が行う。
どちらも世界の動きを影から支えていることに変わりはない。
秘立蛇女子学園。
「悪は善よりも寛大である」という理念を掲げ、
悪忍のみを養成している学園だ。
修行は凄烈を極め、死傷者が出ることもある。
それでも学園から悪忍候補生の姿が消えることはない。
なぜなら、陽に背を向ける者は、影の中でしか生きられないからだ。
これより始まる物語は、
悪忍であることを選んだ忍学生の戦いの軌跡である。
少女たちは、何を思い、何と戦ったのか。
悪を選んだ者たちが辿る紅蓮の道は、果たしてどこに繋がっているのか。
それはまだ誰にもわからない。
善忍と悪忍。
それぞれの道を志す少女たちが
互いの譲れぬ想いを胸に刃を交えていた刹那――
同じく忍を目指し、異なる信念を胸に秘めた少女たちの物語も
そこには存在していた。
死塾月閃女学館
伝説の忍・黒影の理想の下、彼の思想を引き継ぐ
善忍を育成する学び舎である。
大切な者に先立たれ失意に暮れていた少女、雪泉。
この物語は、己が忍として存在する理由を求め、歩みを進め始めた
少女の戦いの軌跡である。
彼女がこの戦いの果てに何を見い出すのか。
それはまだ誰にもわからない。
陽と陰、光と影、善と悪……。
相反する信念の刃を交えた、少女たちの戦いの果て。
瓦礫の山の向こう、怨楼血の断末魔に呼び起されるように
一人の少女が眠りの深淵から舞い戻った。
秘立蛇女子学園。
悪忍のみを養成する学園で
1年生にして筆頭になる程の実力を持った少女がいた。
妖魔によって命を落とした母の仇討ちを望む少女、雅緋。
この物語は、その目的のためひたすら力を求め、あがき続けた
少女の戦いの軌跡である。
彼女がかつて、戦いの中で「何」を得ることが出来たのか。
それはまだ誰にもわからない。